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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

階下がカフェーになっていて、二階がレストーランだった。その上に、後から建て増した狭い三階がついていて、表からは塔のように見えていた。――その家に、お清という女中が居た。

背の高い痩せた女だった。取りたてていうほどの容姿ではなかったが、一寸印象を与える顔立だった。顔の下半分が可愛かった。少し尖り気味の頤に終ってる頬の線が、強いて結んだような小さい口の横で、ぽつりと肉の膨らみを見せて、甘ったるい言葉つきをしそうな若々しさがあった。にも拘らず、顔の上半分が妙に老けていて、骨っぽい額に曇りを帯び、蟀谷の皮膚がゆるんで皺を寄せていた。鼻と眼とに特長があった。さほど高くない鼻だったが、円みを持った眉根まですっと通っていた。黒目の小さな二重眼瞼の眼が絶えず敏活に働いて、捉え難い閃きを放っていた。

そういう彼女の顔立をいつのまに覚えてしまったか、周平は自分でも知らなかった。彼や彼の仲間は、そのカフェーへ度々行きはしなかった。二階の料理を食べに来る客が可なりあったし、よく三階へ上ってゆく常連もあったので、階下の方は自然と閑却されがちで、多少不愉快だった。カフェー専門の心易い家で騒ぐ方が、よほど面白かった。