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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

化粧水と水白粉とだけを薄すらと刷いた横顔が、神々しいほど淋しく見えた。その彼女を前にして、火燵の中に蹲りながらひそかに涙を流してる自分の姿が、想像のうちに浮んできた。

「あなたは冬の休みをどうするつもりなの。」

周平はその言葉を聴きもらした。黙ってると、彼女は初めて顔を挙げて彼の方を見た。

「冬休みに旅でもするの。」

「いいえ」と周平は答えた。「金がないから東京を動けやしないんです。」

「無いからというより、無くなしたからでしょう、余り勝手な真似をして。」

周平はぎくりとした。何とか答えようと思ったが、彼女からじっと見つめられると、心の底まで見透される気がして、顔を伏せた。お清とのことも知られてるに違いなかった。然し知られても構わないと思った。愈々の時には、一切を告白して彼女の前にさらけ出してやろうと思った。それが自分を救う唯一の途のように考えられた。そして彼は彼女の言葉を待った。

然し彼女は、彼が予期した方へは来なかった。暫く黙った後に、俄に苛立った様子になった。自らごまかすかのように忙しく針の手を運びながら、落着きのない角立った声で云った。

「旅をしないんなら、歳暮からお正月へかけて少し手伝って頂戴。