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よしだしょういん

吉田松陰

徳富 蘇峰

「国民之友」1892(明治25)年5月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页

青空文庫

と。独り彼が眼識の尋常有志家に比して、及ぶべからざるのみならず、その人品の崇高純潔にして、堅実健全なる、酒を飲み気を使う暴徒にして、有志家の名を僭する徒輩に比し、天淵啻ならざるを見るべし。

試みに左に掲ぐる書簡を見よ、これ彼が安政元年十二月野山の獄中よりして妹に寄せたるものなり〔細註は記者の挿入に係る〕。

十一月二十七日と日づけ御座候御手紙ならびに九年母、みかん、かつおぶしともに昨晩相とどき、かこい内はともしくらく候えども、大がい相わかり候〔獄中の情景観るが如し〕まま、そもじの心の中をさっしやり、なみだが出てやみかね、夜着をかぶりてふせり候えども、いよいよ涙にむせび、ついにそれなりに寝入り候えども、まなく目がさめ、よもすがら寝入り申さず、色々なる事思い出し申し候〔松陰その人懐うべし〕。そもじや父母様やあに様の御かげにて、きものもあたたかに袷物もゆたかに、あまつさえ筆紙書物まで何一ツふそくこれなく、寒さにもまけ申さず候間、御安心成さるべし。そもじ御家おばさまも御なくなりなされ候事なれば、そもじ万たん心懸け候わでは相すまぬ事、ことにおじさまも年まし御よわい高く成らせらるる事ゆえ、別して御孝養を尽したべかし。