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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

これ北辰一刀流手裏剣用の五寸釘だ」

急拵えの大道芸人

周作は優しく微笑した。

「どうだ甚内、この五寸釘を、練磨体得する所存はないか」

「なんのないことがございましょう。習いたいものでございます」勇気を含んで甚内はいった。

「おお習うか、それは結構。この一流に秀でさえしたら、敵に逢ってもおくれは取るまい。なまじ剣術など習うより、これに専念をした方がいい」「そういうことに致します」「実はな、俺は案じていたのだ。剣術槍術弓薙刀、一流に達していたところで、一撃で相手を斃すことは出来ない。例えば鎌倉権五郎だ、十三束三伏の矢を、三人張りで射出され、それで片目射潰されても、なお堂々と敵を斬り、生命には何んの別状もなかった。剣豪塚原卜伝でさえ、一刀では相手を殺し兼ねたという。まして獲物が五寸釘とあっては、機先を制して投げつけて、精々相手を追い散らすぐらいが、関の山であろうと思っていた。ところがお前の精鋭極まる、ツブテの手並みを見るに及んで、俺の不安は杞憂となった。一本二本では討ち取れないにしても、三本目には斃すことが出来よう」「へえ、大丈夫でございましょうか」「大丈夫だ。