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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

「さようさ、いささかは存じておる」

「やっぱり帆船でございましたかな?」

「さよう、帆船ではあったけれど、帆の数が非常に多かったよ」

「ははあ、さようでございますか」

「それにその帆の形たるや、四角もあれば三角もあり、大きなのもあれば小さなのもあった」

「ははあ、さようでございますか」

「日本の型ではないのだそうだ。南蛮の型だということだ」

「それは、さようでございましょうとも」

「で、船脚が恐ろしく速く、風がなくても駛ることが出来た。ヨット型とか申したよ」

「ははあ、ヨット型でございますな」

平八は手帳へ書きつけた。

「それから」と将監はいいつづけた。

「櫓の格子が朱塗りであったな。それが赤格子の異名ある由縁だ」

「ははあ、さようでございますか」平八は手帳へ書きつけた。

「ええと、それから大砲が二門、船首と船尾とに備えつけてあった。それも尋常な大砲ではない。そうだ、やっぱり南蛮式であった」

「南蛮式の大砲二門」

平八はまたも書きつけた。

「まず大体そんなものだ」

「よく解りましてございます。……ええと、ところで、もう一つ、その赤格子の襲撃振りは、いかがなものでございましたかな?」