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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

「で、素晴らしくいい芝居さ」次郎吉はツルリと顎を撫でたが、にわかにズンと声を落とし、「実はおいらの道楽から行くと、その『見透しの平七』を『玻璃窓の平八』にしたかったのさ。だが、それじゃあんまりだからな。で、平七に負けてやったやつさ」

「おや変ですね、玻璃窓といえば、郡上の旦那じゃありませんか」米八は不思議そうに見返った。

「うん、そうさ、その旦那さ。あけすけにいえばこの芝居はだ、その玻璃窓に見せたいばっかりに、おいら筋立てをしたんだからな」

深い怨みの敵討ち

「その玻璃窓の旦那なら、おとつい観に来たじゃありませんか」

「百も承知だ。待っていたんだからな。そこで早速秀郎の野郎に例の鼓を打たせたのさ。アッハハハ、いい気味だった。あの鼓を聞いた時の玻璃窓の爺の顔といったら、今思い出しても腹がよじれる。いいみせしめっていうやつさな」さもおかしいというように、揺り上げ揺り上げ笑ったものである。

米八には意味がわからなかった。

「でもどうして玻璃窓の旦那に、こんどの芝居を見せたいんでしょう?」

「それか、それには訳がある。……ひらったくいうとまずこうだ。彼奴、としよりの冷水で、鼓賊を追っかけているんだよ。