轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

春が江戸へ訪ずれて来た。この物語りの最初の日から、ちょうど一年が過ぎ去った。「今の世や猫も杓子も花見笠」の、そういう麗かの陽気となった。隅田川には都鳥が浮かび、梅若塚には菜の花が手向けられ、竹屋の渡しでは船頭が、酔っぱらいながら棹さしていた。

一閑斎の小梅の寮へは、相変らず人が寄って来た。ある日久しぶりで訪ねて来たのは、玻璃窓の郡上平八であった。

「これはこれは珍しい。それでも生きていたのかえ」「裾を見な、足があるから。へ、これでも幽霊じゃないのさ」皮肉な二老人は逢うと早々、双方で皮肉をいい合うのであった。「一局囲もうかね、一年ぶりだ」「心得た。負かしてやろう」「きつい鼻息だ、悲鳴をあげるなよ」

パチリパチリと打ち出した。最初の一局は一閑斎が勝ち、次の一局は平八が勝った。で一服ということになった。

「そこでちょっとおききするが、もう鼓賊はお手に入れたかな?」ニヤニヤ笑いながら一閑斎は訊いた。もちろんいやがらせの意味であった。

「うむ」といったが平八は、不快な顔もしなかった。「さよう実は捕えたがな、捕えてみれば我が子なり。……恩愛の糸がからまっていて、どうにもならなかったという訳さ」