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ごせいげん

呉清源

坂口 安吾

「文学界 第二巻第一〇号」1948(昭和23)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,333 字 · 11 页

青空文庫

持参の卵とリンゴとミソ汁だけで食事をすまし、朝だけはゴハンはたべない。

その日は睡眠不足で、対局中、時々コックリ、コックリ、やりだし、ツと立って、三四分して、目をハッキリさせて戻ってきたが、たぶん顔を洗ってきたのだろうと思う。

その翌日も、呉氏はおそくまで睡っていた。そして、もう一同が食事をはじめた頃になって、ようやく起きて来たが、食卓につこうとせず、ウロ/\とあたりを見廻し、やがて自分のヨレヨレのボストンバッグを見つけだして、熱心に中をかき廻している。さすがに敏感な旅館の女中が、それと察して、

「卵は半熟の用意がございます。リンゴも、お持ち致しましょうか」

と云うと、

「えゝ、朝はね」

と、うなずいて、すぐ、食卓についた。ようやく睡眠が充分らしく、二日目の対局からは、もう睡そうな目はしなかった。対局は、持時間十三時間ずつ、三日間で打ちきるのである。

三日目の対局が、呉氏一目(乃至二目)勝、という奇妙な結果に終ったのが夕方五時頃であるが、終るやいなや、すぐ立って、食事の用意がすぐ出来ます、記念の会食の用意ができます、と追いかける声を背にきゝながら、

「えゝ、えゝ、失礼」