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のろいのダイヤモンド

呪の金剛石

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1928(昭和3)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,393 字 · 28 页

青空文庫

五

「解った、もう一度オレの足の武力を試そう。社会部長と編輯長へ宜しく言って置け、さもしい事を言う様だが、お盆の賞与に響くと承知しないぞ。ハッハッハ」

コーヒーの匙を投り出すと、「足の勇」の身体はもう食堂の外へ飛出して居りました。

五

「足の勇」が、ボイロフの二度目の宿を見付けたのは、それから又一週間の後でした。浅草の玉姫町の木賃宿浅田屋というのへ飛びこんで聞くと、確かに手前共に泊って居たに相違ありませんが、急病で二日前に死んでしまいましたという返事です。

その報告を持って来た「足の勇」のしょげようというものはありません。

一方春日野ゆかりは、漸く命だけは取り止めましたが、まだ半睡半覚の状態で、臨床訊問するほどにもなって居ません。何方を向いても、事件はまだ目鼻も付かない有様ですが、私の好奇心ばかりは、いやが上にも煽られるばかりです。

事情を話して、社から二三日の暇をもらって、「足の勇」を案内に、玉姫町の木賃宿へ行ったのは、その日も暮れてから、どん底の木賃宿もいくらか、景気づいて来ようという時刻でした。

猶太鼻を持った、半白の亭主というのが、怒ろしく無愛想で、立入った事を聞いても、なかなか話してくれません。