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わしゅうちめいだん

和州地名談

柳田 国男

「奈良叢記」駸々堂書店、1942(昭和17)年1月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,320 字 · 14 页

青空文庫

五

各自の土地ばかりで勝手な推断を下していては、わかるべきものもわからず、どれもこれも万葉以前からあったかと思うような、先入主を脱し得まい。

五

大和の地名が興味ある研究題目であることは、よほど早くから私なども感じていた。故高橋健自氏は大和で完成した考古学者であったが、毎度我々のために地名の話をしてくれられたことがある。その話の一つとして今でも記憶しているのは、あるいは他の人も言うことかも知れぬが、大和には土佐とか能登とか、国号を地名にもつ土地が非常に多く、捜したら全部が揃っておりはせぬかと思うばかりである。これには何か理由があるだろうが、心当りはないかというような話であった。私が寡聞なためかとも思うが、古い記録の中には思い合せるようなことはなく、また単独にも推測し得られる原由はない。つまりは一つの史上の不思議である。たとえ全部でなくとも十以上、もしも二十近くもそういう例が見つかるならば、これだけからでもかなり重要な過去の事実が、発見せられる日が来るのではないかと思うが、果してそのように数多くの国号地名が大和にはあるのであろうか。もしあるとするならばこれをいつの頃どういう事情の下に現われたものと考えてよいか。