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わしゅうちめいだん
和州地名談
柳田 国男
「奈良叢記」駸々堂書店、1942(昭和17)年1月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,320 字 · 14 页
二
地方の学者の免れがたい弱点は割拠であった。えらい人でも他所の事は知らない。またそれでよいものと心得ている。その反動としては、たまたま少しばかり外の事実を手に入れると、釣合いもなくそれに価値を置き過ぎる。結局全国をまんべんなく、見渡し得る時まで待たなければならぬのである。ところで大和で地名を考えてみようとする場合ばかりは、そうまで待ち遠しい思いをせずとも、ここだけでも若干の成績が挙げられそうな気がする。少なくとも地名が一民族の文化史の上に、どれくらいの発言権をもつかを見究めるだけは可能であって、従って他所の類例を捜す熱意と、それを判別する鑑識とを養い、ある程度孤立の不利を補い得るかと思う。自分は余力が乏しくて何の助勢もできそうにないが、将来地名研究の新機運が、特に大和の地に興らんことを期しまた念じている。
二
地名が千年以上の治乱盛衰を貫いて、切れまもなく活きて働き続けていた実例を、大和のように顕著にまた数多く持っている地方は、内外を通じて実は稀なのである。単に昔の記録に見えているというだけなら、あるものはもっと古くまた詳しいかも知れず、それを現在に当てはめて疑いなくここのことだと、立証し得るものも多いかは知らぬが、中古久しい間書冊とは縁がなく、言葉はただ口から耳へ、授受していた人の住んでいたことを考えると