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わしゅうちめいだん
和州地名談
柳田 国男
「奈良叢記」駸々堂書店、1942(昭和17)年1月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,320 字 · 14 页
三
時代に常に重要であって、文化を現在あるがごとく形づけずにはいられなかったことを、考えない人の数が今よりももっと多かったであろう。
奈良朝・奈良文化などという言葉の流行は、あるいは少しばかり奈良県を災いしている。ここは全国でも珍しく人の多い、生活利害の最も錯綜した、言わば日本の見本のような地方であるのに、外から訪う者ばかりか内にいる人まで、これを万葉遺物の包含層ででもあるかのごとく、眺めようとする気風が強くなっている。どこかの部面には前代と比べて、零落している点もないとは言われぬが、少なくとも庶民の物質文化は、年とともに進展しているのである。かりに中世以降の史書は乏少であろうとも、これをもって空無と同一視することはできない。他にもまだくさぐさの痕跡はあるであろうが、地名の変遷と増加のごときも、また一つの歴然たる文字以外の史徴である。
三
大和の実験はおそらくは我々の好参考であろう。地名が前代生活の無意識の記録であることは、他の府県においても変りはないはずだが、土著が新しかったり、住民の移動が繁かったり、起原が複雑であっていかようの想像でも成り立つ上に、上代の記録がないから古今の比較ができず、消えたり動いたりまちがえたり、また新しいものが次々に加わったりしたことを、確かめてみるような折がないので、理由もなく一