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てつがくのげんだいてきいぎ

哲学の現代的意義

戸坂 潤

「唯物論研究 第六〇、六一号」1937(昭和12)年10月、11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,718 字 · 45 页

青空文庫

印象批評にとって気に入らないのは、あらかじめ文献的に設定された芸術法則を以て、様々の姿態の下に刻々現われる作品に天下り式に臨むという、あの文献学的クリティシズムの学究的な愚かさである。アナトール・フランスは文献学的クリティシズムに対する反感のあまり、文芸に於ける科学的精神そのものにまで、反感を示している。

所謂印象批評は法則の抽出も適用も意に介しないクリティシズムであり、之に反して所謂文献学的批評は、既成の文献学的法則を以て、作品という生き物に適用し、之を勝手に截断しようとする。――処がクリティシズムの特徴であるべきものは法則の抽出と適用とが同時であるという事であった。文献学的クリティシズムは、予め抽出しておいた定式をそのまま適用しようとする。適用される作品は、自分の姿態とは関係なしに、この定式を押しつけられる宿命を負わされている。これはこの場合、公式についての運用を誤っている。之を公式主義と呼ぶなら呼んでもよい。尤も之を以て、科学的批評などと思われては困るが。――法則の抽出と適用とが同時であると云ったクリティシズムの形態は、寧ろ、好意に解釈された限りの印象批評の内に見られるかも知れない。