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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
永井荷風『問はずがたり・吾妻橋 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:吾妻橋、浅草むかしばなし、亜米利加の思出、或夜、噂ばなし、買出し、心づくし、細雪妄評、出版屋惣まくり、にぎり飯、冬日の窓、墓畔の梅、羊羹、老人、渡鳥いつかへる。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,586 字 · 159 页
しかし毎日毎晩というわけには行かない。四、五日目に一人か二人もあればいい方なので、道子はその頃頻と人の噂をする浅草公園の街娼になろうと決心したが、どの辺に出ていいのか見当がつかないので、様子をさぐりに、或日あたりの暗くなるのを待ち、映画見物の帰りのような風をして、それらしく思われる処をあちこちと歩き廻っている中、いつか仮普請の観音堂の前に来かかったのに心づき、賽銭箱に十円札を投り込み手を合して拝んでいた時である。「アラ、道ちゃん」と呼びかけられ、驚いて振返って見ると、小岩の私娼窟にいた頃姉妹のように心安くしていた蝶子という女、もとは浅草の街娼をしていた事もあるという女なので、訳を話して、道子はその辺の蕎麦屋に誘い、委しくいろいろの事情をきいた。
このあたりで女達の客引に出る場所は、目下足場の掛っている観音堂の裏手から三社権現の前の空地、二天門の辺から鐘撞堂のある弁天山の下で、ここは昼間から客引に出る女がいる。次は瓢箪池を埋めた後の空地から花屋敷の囲い外で、ここには男娼の姿も見られる。方角をかえて雷門の辺では神谷バーの曲角。広い道路を越して南千住行の電車停留場の辺。