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しじゅうふわく

四十不惑

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 页

青空文庫

妻は小柴さんがすっかり気に入って、度々話題に上せる。

「とても綺麗な方ね」

「さあ。器量は兎に角、頭がいゝから役に立つ」

「御家庭も相当でしょう?」

「お父さんは官吏だそうだが、腰弁組だろう。大蔵省に勤めていると言っていた」

「洋装でしたけれど、和服ならもっと引き立ちますわ。会社にはあんな方ばかり揃っていますの?」

「先ずあの程度だろうね。皆年頃だから」

「するとあなたは綺麗な人達に取り巻かれている勘定じゃありませんか?」

「気がもめるかい?」

「安心していますわ。あなたなんかをどうするものですか?」

「綺麗というよりも若いからさ。お前なんかもっと綺麗だったよ」

「うまいこと仰有るわ」

「本当だ。ハッハヽヽ」

「あなたは会社では随分気むずかしいんですってね?」

「そんなこともない積りだが」

「いゝえ。御冗談一つ仰有らないから、皆さんピリ/\しているんですって」

「白い歯を見せると取締りがつかないよ。無駄口は一切きかない」

妻は日曜のお昼に小柴さんを招待した。僕もお相伴をしたが、妻にだけしゃべらせて黙りこくっていたから、会社と違って家庭では頗る謹厳だという印象を与えたのらしい。翌朝、小柴さんは人目を憚るようにお礼を述べた。