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よっかのあやめ

四日のあやめ

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,200 字 · 38 页

青空文庫

家中ぜんたいにも言行を慎むようにと布令が出た。特に「大洲の出来事については公私ともに話談すべからず」という厳重な箇条つきで、これは町奉行から城下の市民たちにも通達された。

――深松はどうしておれに知らせなかったのか、なにか理由があるのか。

主税介はどうにも疑念が晴れなかった。周囲の人たちにも彼の加わらなかったことが意外だったらしい、二三日のあいだ、しばしば同じような質問を受けた。

「貴方は御無事だったんですね」とかれらはみな意外そうな顔をした、「それはよかった、私は貴方もいっしょだとばかり思っていました、それはよかったですね」

精明館の門人たちも同様であった。ここでもまた彼の不参加が驚かれ、無事であることを祝われた。そうして、まもなく通次多仲が追放(罰せられなかった理由はのちにわかったが)されてから、主税介に対する評はいっそうよくなり、責任者が老職に喚問されたときにも、彼の不参加は「神妙である」というふうに云われた。

だが主税介は沈鬱な無感動な表情で、人々の云うことを黙って聞きながした。

猪狩りは予定どおり行われた。幕府に届けの出ていたためもあろうが、ほかにもう一つ、大きな理由のあることが、終ったあとでわかった。