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あおいはらふじんのたいつり

垢石釣游記

佐藤 垢石

佐藤垢石『垢石釣游記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葵原夫人の鯛釣、青鱚脚立釣、秋の鮎、蛙を食う岩魚、河鱸遡上一考、鯨を釣る、小鰺釣、さしみ、戦場ヶ原の渓谷、早春の山女魚、釣聖伝、釣場の研究、弟子自慢、道具と餌と天候、アンコウの味、夏釣日記、冬の鯊釣、夜の黒鯛、ガラガラ釣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,298 字 · 100 页

青空文庫

歓声が揚った。ビールで、鰹を釣ったのだ。

夕方、遠くに泳いでいる鯨群を水夫長がクロス・ネストの上から発見したけれど、間もなく霧のなかへ姿を消したので追跡を思い止まった。霧の、夕闇がきた。

夜の食卓に、あの鰹が皮つきのまま厚切りの刺身となって現れた。鮮味――嗜意が舌に躍動する。洋上の珍餐だ。

三日目の朝がきた。八時に海洋気象通報が入ったのを見ると、釜石沖百五十浬ばかりのところに低気圧があるという。我が第二京丸の位置から四、五十浬と離れていない低気圧だ。引続き霧が濃い上に、波も高い、風も吹き出した。

「こん度の航海は、とうとう一頭もとれないのか――」

丹下船長は、僕等にも自分にも寂しそうな顔をする。それから一時ばかりすると沖の鰹船から――金華山の東南百二十浬の付近は霧がはれている。そして、数多い鯨の群が見える――という無電が入った。

船員は勇み立った。俄かに、その場所へ船を急行させることにした。三、四十浬走らねばなるまい。

涼風のくる船橋の上で、話しずきの丹下船長はいろいろと語り出した――金華山沖へは毎年夏になるとイワシやイカやサバや、さまざまの小魚が集まってくるので鯨の群はそれを追って遠いところから集まってくる。