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あおいはらふじんのたいつり

垢石釣游記

佐藤 垢石

佐藤垢石『垢石釣游記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葵原夫人の鯛釣、青鱚脚立釣、秋の鮎、蛙を食う岩魚、河鱸遡上一考、鯨を釣る、小鰺釣、さしみ、戦場ヶ原の渓谷、早春の山女魚、釣聖伝、釣場の研究、弟子自慢、道具と餌と天候、アンコウの味、夏釣日記、冬の鯊釣、夜の黒鯛、ガラガラ釣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,298 字 · 100 页

青空文庫

鋭い銛先が狙い正しく鯨の背肉を縫ったのだ。

同時に、鯨の傷口から鼻の穴から鮮血がほとばしった。あたりの海面が真っ赤になった。この一瞬の刹陣――驚異、感激、戦慄、劇触、打撃、何にたとえたらよかろう。狙い撃ちの重砲で、敵のトーチカを命中爆破させたにも似ていようか。

僕は、気を絶したように一心に海上を瞶め、両手で船橋の屋根の梁を握った。

手負いの巨鯨は猛然として海中深く突入した。恐ろしい速さで恐ろしい力だ。と同時に、五百余尋の絹の太い綱が伸びきると、その綱は引き絞られて半分の直径ほどに細くなった。いまにも、切れそうだ。船は、全速力で鯨の走る方へ走り尾いて行く。

船員は整然と部署につき、無言の活動である。いささか手負い鯨の力が弱ったらしい。キリキリとウインチの歯車が鳴ると、伸びきった綱が手繰り寄せられる。その痛さに、鯨はまた海の中層を走り出す。綱を取りつ、遣りつ、一時間ばかりの奮闘の後、とうとうその巨体を船首近くへ引き寄せた。けれど鯨は最後の逸走の姿勢をとって、波の間に巨体をもがくのだ。

ドン!

二発目の銛を発射した。見事に鯨の胴中に命中した。心臓を破ったらしい。