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あおいはらふじんのたいつり
垢石釣游記
佐藤 垢石
佐藤垢石『垢石釣游記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葵原夫人の鯛釣、青鱚脚立釣、秋の鮎、蛙を食う岩魚、河鱸遡上一考、鯨を釣る、小鰺釣、さしみ、戦場ヶ原の渓谷、早春の山女魚、釣聖伝、釣場の研究、弟子自慢、道具と餌と天候、アンコウの味、夏釣日記、冬の鯊釣、夜の黒鯛、ガラガラ釣。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,298 字 · 100 页
戦場ヶ原の渓谷
山の緑は次第に濃くなる。そして、鱒が円々と肥って来る。奥日光、湯川と湯ノ湖の鱒釣がほんとうの季節となるのだ。
六千尺近い山腹に在る湖と、五千尺の戦場ヶ原を流れる溪流へ、宮内省帝室林野局では無数の姫鱒と虹鱒、川鱒を放流して、それが年々繁殖を続けている。湖の姫鱒は六月と十月がよく釣れる。殊に今年の六月はよく釣れた。今後益々面白かろうと思う。
私は二、三日前、湯川へ釣に行って見たが、相変らずこの川には鱒が多かった。湯滝の下から中禅寺の菖蒲ヶ浜に近い竜頭ノ滝までの間は峡澗となり、平らの流れとなり幾曲りして変化に富み、ただのハイキングコースとしても賞遊するに足りるが、さらに携えた一竿に鱒の一跳ねが上るのであるから、甚だ愉快である。
朽ちた倒木の下、白く小さく咲いた川藻の濃紺のかげに、川鱒と紅鱒が眼を光らせている。竿は一丈か一丈二尺、丈夫な道綸を六尺位の長さにして毛鈎をポイントに打ち込んで、水面をチョンチョン叩きながら手前の方へ引きよせる間に、鱒は躍然として毛鈎に飛びつく。間髪を容れず、鈎合せを行うと掛るのだ。
鱒の跳躍と、釣者の呼吸が合致して、ガッチリと鱒の口に鈎先が刺し込まるところに、毛鈎釣の興趣があって、一度その味を知ったら終生忘れられまい。