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かいとのはなし
垣内の話
柳田 国男
「民間伝承十二卷八・九號」1948(昭和23)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,985 字 · 14 页
三
三
できるだけ単純なまたわかりやすい側面から、近よって行く習慣を我々の間では付けることにしたい。むつかしく考えないと学問ではないというような、魯かな迷信から脱出する手始めに、まずこの面倒くさい問題を、できるだけ素朴に処理してみよう。
全国各時代の垣内現象を一貫して、最も著しい共通点は何かと言うと、私は個々の垣内の呼び名ではないかと思う。古い文書にそれは数多く、また近頃の地名採集にもおいおいと出て来るが、それには争うべからざる古今の類似がある。だいたいにこれを三通りの命名法に、分けてみることはそう無理ではない。その第一は方角と所在、地図の上に現わさずともおおよそは配置がわかり、つまりは全土をことごとく、垣内に分けたのではないことを認めさせる。第二には人名を冠するもの、この人名は多分持主であって、折々は改称もあったかしらぬが、たいていは始めてその垣内を設定した日を記念している。単なる人名も土地にとっては歴史だろうが、外から窺うことはやや困難である。眼に留るのは大小の地役人、社寺の従属者の他に、鍛冶垣内・紺屋垣内という類の諸職の名が多い。村に彼等を定住せしめるには、何か収益の保障が必要だったろうことを考えると、垣内が一つの特権であったことも少しわかるのだが、これはもう少し事実を集めた上でないと、はっきりとした