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なつのよのぼうけん

夏の夜の冒険

平林 初之輔

「文学時代 第二巻第九号」新潮社、1930(昭和5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,930 字 · 12 页

青空文庫

――痛快だったね。

――うん、でも、あんなことをして、かえってあの子があとでひどい目にあいやしないかしら、いま内儀さんたちもそう言ってたよ。

私は少し憂鬱になってきた。

――そんなことしたら承知しないさ。僕はまたちょいちょい見にいってやるつもりだ。

――そうだ、そうしないといけない。このままじゃかえって悪い結果になるかもしれないからね。

だがむろん私たちはそれきり行ってみなかった。翌くる日の晩、例のカフェへ行ってたずねてみると、

――ひどい人ですね、今日の夕方になって、やっと父親の方が迎えにきたんですよ。お礼一つ言わないで、怒るようにしてつれてゆきましたよ。子供もちっともなつかないで、帰るのはどうしてもいやだってのを、ぶったり叱ったりしてひきずるようにしていきましたよ。いいえ、お金なんて一銭だっておいてゆくもんですか……

こんな話を女給の口から聞いても、もう前日のような興奮をとりもどすことはできなかった。世の中には色々な人間があるもんだ――こう思って、軽く吐息をつくくらいがせいぜいだった。

それから六七年たってからだ。

私はしばらくぶりである会社へつとめたことがある。