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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

原民喜『夏の花・心願の国』。同一底本的分册已合并为一书。收入:夏の花、苦しく美しき夏、秋日記、冬日記、美しき死の岸に、死のなかの風景、火の唇、壊滅の序曲、廃墟から、鎮魂歌、永遠のみどり。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 152,816 字 · 310 页

青空文庫

「あ、魂消た、度胆を抜かれたわい」と三浦は歪んだ笑顔をしていた。……警報解除になると、往来をぞろぞろと人が通りだした。ざわざわしたなかに、どこか浮々した空気さえ感じられるのであった。すぐそこで拾ったのだといって誰かが砲弾の破片を持って来た。

その翌日、白鉢巻をした小さな女学生の一クラスが校長と主任教師に引率されてぞろぞろとやって来ると、すぐに式場の方へ導かれ、工員たちも全部着席した頃、正三は三浦と一緒に一番後からしんがりの椅子に腰を下ろしていた。県庁動員課の男の式辞や、校長の訓示はいい加減に聞流していたが、やがて、立派な国民服姿の順一が登壇すると、正三は興味をもって、演説の一言一句をききとった。こういう行事には場を踏んで来たものらしく、声も態度もキビキビしていた。だが、かすかに言葉に――というよりも心の矛盾に――つかえているようなところもあった。正三がじろじろ観察していると、順一の視線とピッタリ出喰わした。それは何かに挑みかかるような、不思議な光を放っていた。……学徒の合唱が終ると、彼女たちはその日から賑やかに工場へ流れて行った。毎朝早くからやって来て、夕方きちんと整列して先生に引率されながら帰ってゆく姿は、ここの製作所に一脈の新鮮さを齎し、多少の潤いを混えるのであった。