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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

「改めて親類のお盃とやりますかな。」

そういう七郎左衛門の愉快げな声を聞きながら、まず年若な寿平次が土器を受けた。続いて半蔵も冷酒を飲みほした。

「でも、不思議な御縁じゃありませんか。」と七郎左衛門はおばあさんの方を見て言った。「わたしが妻籠の青山さんのお宅へ一晩泊めていただいた時に、同じ定紋から昔がわかりましたよ。えゝ、丸に三つ引と、に木瓜とでさ。さもなかったら、わたしは知らずに通り過ぎてしまうところでしたし、わざわざお二人で訪ねて来てくださるなんて、こんなめずらしいことも起こって来やしません。こうしてお盃を取りかわすなんて、なんだか夢のような気もします。」

「そりゃ、お前さん、御先祖さまが引き合わせてくだすったのさ。」

おばあさんは、おばあさんらしいことを言った。

相州三浦の公郷村まで動いたことは、半蔵にとって黒船上陸の地点に近いところまで動いて見たことであった。

その時になると、半蔵は浦賀に近いこの公郷村の旧家に身を置いて、あの追分の名主文太夫から見せてもらって来た手紙も、両国十一屋の隠居から聞いた話も、すべてそれを胸にまとめて見ることができた。