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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
01 第一部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页
五
上町まで帰って行くと、問屋九太夫をはじめ、桝田屋、蓬莱屋、梅屋、いずれももう髪の白いそれらの村の長老たちが改まった顔つきで、馬籠の新しい駅長をそこに待ち受けていた。
五
「あなたは勤王家ですか。」
「勤王家かとはなんだい。」
「その方のお味方ですかッて、きいているんですよ。」
「お民、どうしてお前はそんなことをおれにきくんだい。」
半蔵は本陣の奥の上段の間にいた。そこは諸大名が宿泊する部屋にあててあるところで、平素はめったに家のものもはいらない。お民は仲の間の方から、そこに片づけものをしている夫を見に来た時だ。
「どうしてということもありませんけれど、」とお民は言った。「お母さんがそんなことを言ってましたから。」
半蔵は妻の顔をながめながら、「おれは勤王なんてことをめったに口にしたこともない。今日、自分で勤王家だなんて言う人の顔を見ると、おれはふき出したくなる。そういう人は勤王を売る人だよ。ごらんな――ほんとうに勤王に志してるものなら、かるがるしくそんなことの言えるはずもない。」
「わたしはちょっときいて見たんですよ――お母さんがそんなことを言っていましたからね。