轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
04 第二部下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页
鈴の屋の翁以来、ゆかりの色の古代紫は平田派の国学者の間にもてはやされ、先師の著書もすべてその色の糸で綴じられてあるくらいだが、彼半蔵もまたその色を愛して、直次の梳いてくれたのを総髪にゆわせ、好きな色の紐を後ろの方に結びさげていた。吉左衛門の時代から出入りする直次は下女のお徳の父親に当たる。
「お民、おれは王滝の方へ出かけるんだぜ。」
それをみんなまで言わせないうちに、お民は夫の様子をみて取った。妻籠の兄を見て来た目で、まったく気質のちがった夫の顔をながめるのも彼女だ。その時、半蔵は店座敷の方へ行きかけて、
「おれは、いつでも出かけられるばかりにして、お前の帰りを待っていたところさ。お前の留守に、お母さんの枕屏風もできた。」
そういう彼とても、娘の縁談のことでわざわざ妻籠まで相談に行って来たお民と同じ心配を分けないではない。年ごろの娘を持つ母親の苦労はだれだって同じだと言いたげなお民の顔色を読まないでもない。まだお粂にあわない人は、うわさにだけ聞いて、どんなやせぎすな、きゃしゃな子かと想像するが、あって見て色白な肥ったからだつきの娘であるには、思いのほかだとよく人に言われる。