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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
04 第二部下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页
「フム、フム。」と言って聞いていた半蔵は話の途中でお民の言葉をさえぎった。
「つまり、おばあさんたちはどう言うのかい。」
「まあ、兄さんの意見じゃ、この縁談はすこし時がかかり過ぎたと言うんですよ。もっとずんずん運んでしまうとよかったと言うんですよ。」
「いや、おれは今、そんなことを聞いてるんじゃない。つまり、どうすればいいかッて聞いてるんさ。」
「ですから、お里さんの言うには、まだ御祝言には間もあることだし、そのうちにはお粂の気も変わるだろうから、もうすこし様子を見るがいいと言うんですよ。そうはっきりした考えがお粂の年ごろにあるもんじゃない。お里さんはその意見です。気に入った小袖でも造ってくれてごらん、それが娘には何よりだッて、おばあさんも言っていました。」
そんな話から、お民は娘のためにどんな着物を選ぼうかの相談に移って行った。幸い京都麩屋町の伊勢久は年来懇意にする染め物屋であり、あそこの養子も注文取りに美濃路を上って来るころであるから、それまでにあつらえる品をそろえて置きたいと言った。どんな染め模様を選んだら、娘にも似合って、すでに結納の品々まで送って来ている南殿村の人たちによろこんでもらえるだろうかなぞの相談も出た。