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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
04 第二部下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页
宗教改革の機運が動いた跡はここにも深いものがある。半蔵らが登って行く細道は石の大鳥居の前へ続いているが、路傍に両部時代の遺物で、全く神仏を混淆してしまったような、いかがわしい仏体銅像なぞのすでに打ち倒されてあるのを見る。その辺の石碑や祠の多くは、あるものは嘉永、あるものは弘化、あるものは文久年代の諸国講社の名の彫り刻まれてあるものだ。さすがに多くの門弟を引き連れて来て峻嶮を平らげ、山道を開き、各国に信徒を募ったり、講中を組織したりして、この山のために心血をささげた普寛、神山、一徳の行者らの石碑銅像には手も触れてない。そこに立つ両部時代の遺物の中にはまた、十二権現とか、不動尊とか、三面六臂を有し猪の上に踊る三宝荒神とかのわずかに破壊を免れたもののあるのも目につく。
さらに二人は石の大鳥居から、十六階、二十階より成る二町ほどの石段を登った。左右に杉や橡の林のもれ日を見て、その長い石段を登って行くだけでも、なんとなく訪うものの心を澄ませる。何十丈からの大岩石をめぐって、高山の植物の間から清水のしたたり落ちるあたりは、古い社殿のあるところだ。大己貴、少彦名の二柱の神の住居がそこにあった。