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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

着物も白、帯も白、鉢巻も白、すべて白ずくめな山の巡礼者と前後して、やがて半蔵も禰宜の家の人たちに別れを告げて出た。彼が帰って行く山道の行く先には、手にする金剛杖もめずらしそうな人々の腰に着けた鈴の音が起こった。王政第六の春もその四月ころには、御嶽のふもとから王滝川について木曾福島の町まで出ると、おそらく地方の発行としては先駆と言ってよい名古屋本町通りの文明社から出る木版彫刻半紙六枚の名古屋新聞が週報ながらに到着するころである。時事の報道を主とする伝聞雑誌のごとき体裁しかそなえていないものではあるが、それらの週報は欧米教育事業の視察の途に上った旧名古屋藩士、田中不二麿が消息を伝えるころである。過ぐる四年の十一月十日、特命全権の重大な任務を帯びて日本を出発した岩倉大使の一行がどんな土産をもたらして欧米から帰朝するかは、これまた多く人の注意の的となっていた時だ。その一行、随員従者留学生等総員百七名の中に、佐賀県人の久米邦武がある。この人は、ただ文書のことを受け持つために大使の随行を命ぜられたばかりでなく、特に政府の神祇省から選抜されて一行に加わった一人の国学者としても、よろしくその立場から欧米の文明を観察せよとの内意を受け、新興日本の基礎を作る上に国学をもってする意気込みであるとのうわさは、ことに平田一門の人