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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
04 第二部下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页
ているあたりは小さな獣の集まる場所に変わっている。思わずお民は時を送った。生まれて半歳ばかりにしかならないような若い猫の愛らしさに気を取られて、しばらく彼女も客人のことなぞを忘れていた。彼女の目に映るは、一息に延びて行くものの若々しさであった。その動作にはなんのこだわりもなく、その毛並みにはすこしの汚れもない。生長あるのみ。しかも、小さな獣としてはまれに見る美しさだ。目にある幾匹かの若い猫はまた食うことも忘れているかのように、そこに軽やかな空気をつくる。走る。ころげ回る。その一つ一つが示すしなやかな姿態は、まるで、草と花のことだけしか思わない娘たちか何かを見るように。
その辺は龍の髯なぞの深い草叢をなして、青い中に点々とした濃い緑が一層あたりを憂鬱なくらいに見せているところである。あちこちに集まる猫はこの苔蒸してひっそりとした坪庭の内を彼らが戯れの場所と化した。一方の草の茂みに隠れて、寄り添う二匹の見慣れない猫もあった。ふと、お民が気がついた時は、下女のお徳まで台所の方から来た。その庭にばかり近所の猫が入り込むのを見ると、お徳は縁先にある手洗鉢の水でもぶッかけてやりたいほど、「うるさい、うるさい。