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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

大政復古の当時、帝には国是の確定を列祖神霊に告ぐるため、わざわざ神祇官へ行幸したもうたほどであったが、やがて明治四年八月には神祇官も神祇省と改められ、同五年三月にはその神祇省も廃せられて教部省の設置を見、同じ年の十月にはついに教部文部両省の合併を見るほどに推し移って来る。今は師も老い、正香のような先輩ですら余生を賀茂の方に送ろうとしている。そういう半蔵が同門の友人仲間でも、香蔵は病み、景蔵は隠れた。これには彼も腕を組んでしまった。

六

王政第六の秋立つころを迎えながら、山里へは新時代の来ることもおそい。いよいよ享保以前への復古もむなしく、木曾川上流の沿岸から奥地へかけての多数の住民は山にもたよれなかった。山林規則の何たるをわきまえないものが窮迫のあまり、官有林にはいって、盗伐の罪を犯し処刑をこうむるものは増すばかり。そのたびに徴せらるる贖罪の金だけでも谷中ではすくなからぬ高に上ろうとのうわささえある。

世は革新の声で満たされている中で、半蔵が踏み出して見た世界の実際すらこのとおり薄暗い。まして娘お粂なぞの住んでいるところは、長いこと彼女らのこもり暮らして来た深い窓の下だ。