轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

」

二

とうとう、半蔵もこんな風雨をしのいで一生の旅の峠にさしかかった。人が四十三歳にもなれば、この世に経験することの多くがあこがれることと失望することとで満たされているのを知らないものもまれである。平田門人としての彼は、復古の夢の成りがたさにも、同門の人たちの蹉跌にも、つくづくそれを知って来た。ただほんとうに心配する人たちのみがこの世に残して行くような誠実の感じられるものがあって、それを何ものにも換えがたく思う心から、彼のような人間でも行き倒れずにどうやらその年まで諸先輩の足跡をたどりつづけて来た。過去を振り返ると、彼が父吉左衛門の許しを得て、最初の江戸の旅に平田鉄胤の門をたたき、誓詞、酒魚料、それに扇子壱箱を持参し、平田門人の台帳に彼の名をも書き入れてもらったのは安政三年の昔であって、浅い師弟の契りとも彼には思われなかった。その師にすら、「ここまではお前たちを案内して来たが、ここから先の旅はお前たち各自に思い思いの道をたどれ」と言わるるような時節が到来した。これは全く自然の暇乞いで、その年、明治六年には師ももはや七十二歳の老齢を迎えられたからである。