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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
隼男というように。」
この川西の提案に父親はすぐ賛同した。川西はそうと極まったなら、そのうちに戸籍の方へ届出をしようが、その手続は引受けたといって、父親をよろこばした。この父親は他の世話はよくしても、身辺の雑事で面倒を見るということが何よりも嫌いなのである。
鶴見は父が死ぬまでに、区役所などに出頭するのを一度なりとも見たことがない。記憶のどこを探しても、そんなためしは皆無のようだといって、匙を投げる。
それが家族に対しては、制度と秩序とを、細やかにむしろ厳格に、守らせていなければ気が済まなかった父であった。しかるに社会生活においては、その新制度を極端に面倒ぐさがった。まだそういう観念と義務とに慣らされていなかったせいもあったろうが、父は生来片意地な性格の一面を持っていた。新時代の要請に容易に志を遷すということをなしえなかったのである。
その父が法律や規則などを煩さがっていながら、当時は司法省に勤めていた。矛盾のようであるが、父の係りは営繕課であった。建築の方で起用せられていたのである。築城の素養があるといって、それが自慢の一つであった。
各藩の城廓の平面図に淡彩を施したのが、何十枚となく一綴りにしてあった。