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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

多かるべきはずであった流星雨が降り足らなかったといっても好い。しかもそれが一刹那閃めくことがあっても次の瞬間にはすでに滅えてしまっている。いわゆる前方を鎖してわだかまるのは常闇である。一刹那の光はむしろ永劫の暗黒を指示するが如くに見える。

それでも鶴見にとっては、よしや回想の破片であろうとも、これを記念の緒につないで置けば、まさかの時の念珠の数え玉の用にも立とう。鶴見はそう思ってみて、それで好いのだと諦めている。

明治十六年、新築落成。これが一つの変動であった。旧家屋の構造様式が徳川末期の江戸風のもので、それがちょっとした旗本の隠居所とも思われるものであったとすれば、新築はどこか明治の役人向きの臭味に染ったものであった。広さはたいして違わぬが全体に殺風景なところが感ぜられる。趣味からいえば、もとのままの方が落ちつきがあって好ましかった。そのくせ今度は家の隅に茶室めいたものが造られて、炉が切ってあった。

父はその茶室に閉じ籠って、七十歳を超えてから死ぬるまでの幾年かをすわり続けた。父の茶道は素より然るべき藪の内の宗匠に就て仕上げをしていたのであるが、しかも父の強い個性は徒らな風流を欲しなかった。