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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
その一部分を譬えていえば、ひとりよがりの自慢の手料理が、それどころでなく、立派な饗宴の膳部の向附にもふさわしい滋味を備えたものになるのである。
鶴見はそれだけの説明を分りやすいように砕いていおうとして見たが、思うようにはうまく行かなかった。ただいつになく熱意の籠っているのが窺われたので、老刀自は黙って聞いていた。鶴見は語りやめたが、その談義が果して終ったものかどうか、それさえよくは分らなかった。そこで老刀自は分ったような、分らぬような顔をしている。
鶴見にしてみても、ここまで来て何か拍子抜けがしたようで収まりがつかない。そう思って結末の文句を探している様子であったが、ふと探しあてたと見えて、かれは改めてこういった。
「まあ、こんなことになるのだろう。今日のこの事に当はめていうと、雪間の草の春は老木の梅の春だね。そっくりそうなるよ。」かれはいい終って愉快そうにからからと笑う。
老刀自はまたはぐらかされるのかと思ったが、鶴見が余り心持よさそうなのを見て、わざとらしくなく共笑いをしている。
鶴見が止めどなく長談議をつぶやいていたうちに、娘の静代は梅の枝を剪って来て、しばらく弄んでいて、話の終るのを待ち構えていた。