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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

それがやがて執心である。子代もなく名代もないその執心は、いわば反逆者の魂となって悶え苦しむ。その執念を晴らそうとして、変遷推移する世代から、犠牲の座に据えられた第一人者を選んで、いつでも憑りつき乗りうつる。迢空さんはそういっているのである。

犠牲者はその時から献身者の地位に立たされねばならなかった。繭に籠っていた蛹が蛾と化り、不随意に見えた世界を破って、随意自在の世界に出現する。考えてみればこの急激な変貌の畏しさがよく分る。受身であった過去は既に破り棄てられた。献身者は全く新たな目標を向うに見つけて未知の途に上る。身心を挙げてすべてに当るより外はない。肉身といえばか弱い。心といっても掌に握り得るものでもない。ただあるものは渇仰である。光明に眩まされた憧憬である。

現実に即して言えば、それは旧制度が停滞していたそのなかで諦めようにも諦められずに知性の発揚をいちはやく感じていたものの目覚めである。

家庭も社会もただ一色の淀みの底に沈んでいる。そういう環境の中で人々は相互に不安を抱いて語り合っていた。そして灰色に見える塗籠の奥では、因襲は伝統の衣を纏って、ひそひそと人の世の秩序を説いた。