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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
市に接した山村に捜索に往って、渓流の畔に転がっていたものを見つけ出したというのである。鶴見に取って庭師の自慢話は実はどうでも好いのである。
その大石というのは子持石であった。凝灰岩に堅くて黒い礫を孕んでいる。その大小の礫の抜け出したあとが痘痕のように見える。その穴にはしのぶが生えている。いわゆるのきしのぶである。石の形は蝦蟇が蹲っているようにも思われて、ちょっと渋い姿を見せている。一方の腹面には凹処があって、そこに水が溜る。頂上にはわざと削ったような平面が少しある。
鶴見はその石の頂上にある平面のところに、かつては小さな龕が祀られてあったものと想像した。この石はそこの村での或る信仰の対象物であったらしい。そう思って庭師にその事を訊してみたが、庭師は夢にも知らぬといった。
それはそれとして、据えられた大石を翌日になってじっと眺めていると、どうであろう。蜥蜴が一疋、その岩の面を昇ったり降りたりしている。それが前からの遊びどころででもあったかのように、いかにも自適している。
一体鶴見には偏好性があって、虫類では蜥蜴が第一、それから守宮、蟷螂という順序である。