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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

「ははあ左様か、よろしゅうござる」

この手箱がありさえしたら、これから度々この娘が、訪ねて来ないものではない。何と云っても美しい娘で、美人を見るということは、悪い気持のものではない。……これが義哉の心持だった。それで、承知したのであった。話の口が切れたので、すぐに義哉は追っかけて訊いた。

「由ありそうな杉の手箱、何が入れてありますかな?」

「さあ何でございましょうか」お錦は一向平気で云った。「戴いたものでございますの」

「ほほう左様で、誰人からな?」

「ハイ、見知らぬ老人から」

「見知らぬ老人から? これは不思議」

「ほんとに不思議でございますの。……昨夜あれから参りました、瓦町の古家で、気味の悪い老人から、戴いたものでございます」

「ふうむ」と云ったが小堀義哉は、にわかに興味に捉えられた。

で、立ち上って隣室へ行き、袋戸棚の戸をあけて、杉の手箱を取り出して来た。それから仔細に調べたが、

「この箱は杉ではない」先づこう云って首を傾げた。

「杉でないと仰有いますと?」

「杉材としては持ち重りがする。鐡で作った箱の表皮へ、杉の板を張り付けたもので、しかも日本の細工ではない。