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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

「だって聞いたんだもの。おいらが、こしらえ事をいったんじゃねえのよ」

「悪いや、お化けが出るなんて」

こういいながら石段を上る子供連。村里から机の屋敷へのぼるには、かなりの石段を踏まなければならぬ。

「だって、この間も、旅のお侍がいってたよ」

「何だって」

「あの道場へお化けが出るって」

「嘘だあい」

「聞いてみな、今度、旅のお侍が通ったら聞いてみな」

「どんなお化け?」

「知らねえや、おいらは見たことがねえから」

「嘘だい」

たしなめ役の丈の高いのが、お化け説をどこまでも否定する。

「お化けが出たって、夜だけだろう」

「そうさ」

「夜だけなら怖くねえや」

いちばん背の低いのが怖くないという。

「与八さんがいらあ、与八さんがいるから怖くねえや、与八さんは力があるんだぜ、とても力があるからなあ」

「駄目だよ」

おでこが差出口をする。

「何で駄目だい」

「与八さんは、力があったって、お人好しだから駄目だよ」

「お人好し?」

「ああ」

どちらもお人好しの意味がよくわからないで、

「お人好しなんていうのはおよしよ、与八さんは、ありゃお地蔵様の生れかわりだって、うちのおっ母がいってたよ」

「うちの父は、与八さんという人は、ありゃお人好しだっていってたよ。