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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

微笑を含んで会釈するらしい人の面をちらと見ました。そうして色の白い、髪の黒い、身分ありそうな女の人であることだけを、米友は認めてしまいました。

前なる乗物の主がわざわざ駕籠の戸をあけての挨拶にかかわらず、美少年はそれをちょいと振返ったばかりで、すっと自分が先頭をきってしまい、一行のすべてがそれに従って進みました。

この場合、米友としては、先頭をきってさいぜんの美少年と歩調を共にしたものか、それとも殿を承って、この見も知らぬ一行について行った方がいいかと迷いましたが、よしよし、やっぱり先へやって、やり過した方がいい。

こうして、このかなり物々しい一行は六角堂を乗出して、真直ぐに北へ行けば一宮から岐阜へ出る街道を、左に取って、長束から稲葉伝いの大垣街道を打たせるのです。

計らず殿を承った米友は、街道の左右を見て広い田場所だなあと思いました。見渡す限り田圃だ――おれも国を出てからずいぶん諸所方々を流浪したが、今までこんな広い田圃を見たことがないと思いました。

米友は今、名も知れぬ一行の殿を承って、茫然として進み行くばかりです。

これに従って行けば道庵先生の跡が確かまるというわけでもなく、お角さんその人はどの道をとったのかさえ明らかでないが、ともかく、あの美少年はなかなか目から鼻へ抜けている上に、お角さんとも充分