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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

中里介山『大菩薩峠4』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 页

青空文庫

「どうでもしてみやがれ」

短刀を揮った裸一貫の男は、敢て警固の足軽や侍を畏れようとはしません。

「控えろ!」

棒を持ったのが、追っかけて来る博徒を遮りましたけれども、博徒連中は、そんなものが眼に留まらぬくらいに気が立っていました。

「野郎、ふざけやがって……」

「無礼者、控えろ」

ここでお供先の足軽や侍は、博徒連を取押えるために、彼等を相手に格闘せねばならなくなりました。

「喧嘩だ、喧嘩だ」

と群衆は、いよいよ沸き立たないわけにはゆきません。

短刀を左の手で揮った裸の男は、右の手が無いにも拘らず、その身体のこなしの敏捷なことは驚くべしであります。取押えようとする同心や足軽の手先の棒先を潜り廻って、あちらへ抜け、こちらへ抜ける早業が、充分に喧嘩と人騒がせに慣れきっているものの振舞です。

女乗物を囲んでいる女中たちは泣き出しそうです。

宇津木兵馬のあとを追うていた二人の同心は、この騒ぎでも兵馬を見捨てて、その騒ぎの方へ出向くことを躊躇しました。

「左様、それでは」

一人が一人の耳に口をつけて囁くと、囁いた方が人を分けて前へ進み出し、囁かれた方は、もとのままに兵馬を監視しているらしい。