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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

中里介山『大菩薩峠4』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 页

青空文庫

それは今までこのことの騒ぎが、いったい何に原因するのだかわからずに騒いでいた連中が、仰いで見れば、ともかくもその成行が見られるようになったからであります。それですから、ことを怖がる女乗物の連中などのほかは、一人もこの場を立去るものがありません。

がんりきは血塗れになって、丸太から丸太、蓆から蓆を伝って猿のように走って行きます。それが見えたり隠れたり、眼もあやに走ると、そのあとを同じように裸体になった荒くれ男が、

「野郎、逃がすな」

と罵って、何人となく蛙のように飛びついて行くのですから、その原因と人柄はよくわからないながら、確かに面白い見物であることに相違ありません。

この時分に、短刀を投げ捨ててしまっていたがんりきは、それでも青地錦だけは口に啣えて放すことではありませんでした。

小屋から小屋を飛んで歩いたがんりきは、いつのまにか馬場の桟敷の屋根へ飛び移っていました。

「それ、野郎が桟敷の屋根へ飛んだ」

蛙のような裸虫が、桟敷の屋根、桟敷の屋根と言いながら飛びついたけれども、これらの裸虫は、がんりきのやったように手際よく、小屋掛けから桟敷の屋根まで飛びうつることができません。