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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
だが、太刀川は、
「ふん」とせせら笑って、
「いや、よくわかった。だが、ケレンコ君、重ねていうだけ無駄だ。僕は君の申し出にどうしても従うことは出来ない。そのため、君が、僕の命がほしいというなら、勝手にうばいたまえ。僕には、僕の覚悟があるのだ」
断乎としていいはなった。
すると、今まで強いておだやかによそおっていたケレンコは、いよいよ仮面をぬいで来た。
「そうか」
あきらめたようにつぶやくと、顔色がにわかにけわしくなった。怒をふくんだ目が、太刀川をじーっと見つめた。
「よい度胸じゃ」
皮肉な口もとに、うすきみ悪い笑をうかべながら、
「それじゃ、可哀そうだが、君ののぞみ通り、命をもらおうか」
目で合図をすると、左右にいながれた部下たちは、無言のまますーと立ち上った。と同時に、黒服の下からニューッとつき出された十挺の拳銃、その拳銃が一せいに太刀川の胸をねらって、ぴたりと、とまったのである。
室内にみなぎるすさまじい殺気。
ああ、快男児太刀川時夫も、ついに最期の時が来たのか。
もとより国にささげた体なら、すてる命は惜しくない。だが、太平洋の底には、日本をねらう恐るべき海底要塞が、夜を日についで建造をいそいでいるのだ。