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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

すると、マニラに到着するのは、何時になることやら。

「小父さん。外はひどい嵐になったよ」

太刀川時夫は、だしぬけに中国語でよびかけられて、はっと目を覚ました。彼は睡ってはならないと思いつつ、いつの間にか、うとうととしたのだった。

声のする方にふりむくと、すぐ鼻さきに、中国少年の汚れた顔があった。

「ああお前か。あははは、すっかり気がおちついたようだね」

「小父さん。今しがたこの飛行艇は左の方へ向をかえたよ」

「はははは、そうか。ところで僕をつかまえて、小父さんはすこし可哀そうだが、お前はなんという名かね」

「おれの名かい」

「そうだ」

「石福海というのだ。こういう字を書くんだよ」

少年は、掌のうえに、指さきで文字をかいてみせた。

「なるほど石福海か。福海にしては、ちとみすぼらしい福海だね」

その時であった。少年は太刀川の脇腹をぐっと突いた。

「小父さん。悪い男が、部屋を出てゆくよ」

「えっ」

彼は、顔をあげて、室の出入口を眺めた。出入口の扉を押して、ケント老夫人が出てゆくところだった。酔っぱらいのリキーを座席にのこしたまま!……

電送写真

(変なことをいう少年だ)