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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

それを使う時がいよいよ来たのだ。まさかと思った大海魔が、目の前にあらわれたのである。今だ今だ。今この報告をしなければ、ステッキを使う時が、永久に来ないかもしれない。そして、おそらくこれが、最初にして最後の報告になるかもしれない。――太刀川青年は、そんなことを考えながら、ステッキの頭についている蓋をはずすと、内部につめこまれた精巧な超小型の無電機をのぞいた。くわしいことは、軍機の秘密だから、のべられないけれど、機械のどの部分も、ゴムに似たある特別の弾力のあるかたい物でかためてある。なげとばそうと、海水につかろうと、また少しぐらい熱しようと、中にある機械の働きは、少しもくるわないというすばらしいものだ。

太刀川青年は、ステッキの中から、紐のついた南京豆ほどの奇妙な受話器をひっぱりだし、耳の穴に入れた。そして右の指先で、小さな無電の電鍵を、こつこつとたたいた。

「X二〇三、X二〇三」

それは、例のよびだし符合であった。

太刀川は、そのよびだし符合を、十四ほど、つづけざまにうった。

それがすむと、電鍵のそばについているスイッチをきりかえた。それは、機械が、以後電話ではたらくように、なおしたのだった。