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きかいなさいかい
奇怪な再会
「大阪毎日新聞夕刊」1921(大正10)年1、2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,996 字 · 43 页
――どうしてはいって参りましたかしら。」
「お前はちっとも知らなかったの?」
「はい、その癖ここにさっきから、御茶碗を洗って居りましたんですが――やっぱり人間眼の悪いと申す事は、仕方のないもんでございますね。」
婆さんは水口の腰障子を開けると、暗い外へ小犬を捨てようとした。
「まあ御待ち、ちょいと私も抱いて見たいから、――」
「御止しなさいましよ。御召しでもよごれるといけません。」
お蓮は婆さんの止めるのも聞かず、両手にその犬を抱きとった。犬は彼女の手の内に、ぶるぶる体を震わせていた。それが一瞬間過去の世界へ、彼女の心をつれて行った。お蓮はあの賑かな家にいた時、客の来ない夜は一しょに寝る、白い小犬を飼っていたのだった。
「可哀そうに、――飼ってやろうかしら。」
婆さんは妙な瞬きをした。
「ねえ、婆や。飼ってやろうよ。お前に面倒はかけないから、――」
お蓮は犬を板の間へ下すと、無邪気な笑顔を見せながら、もう肴でも探してやる気か、台所の戸棚に手をかけていた。
その翌日から妾宅には、赤い頸環に飾られた犬が、畳の上にいるようになった。
綺麗好きな婆さんは、勿論この変化を悦ばなかった。