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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
野村胡堂『奇談クラブ(全)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 页
美しい像を諸人の眼に
これが、今の世の名も無い彫物師が、鑿一挺で作り出したとは、どうして信じられましょう。
「これは驚いた、大した出来だ」
左衛門の長次、人形の値も聞かぬうちに、商売気を離れて最上級の褒め言葉を投げ出してしまいました。
これだけの人形なら血も通うだろう。脈も打つだろう。柔かそうな肌へ触って見たら、人間と同じように、体温を感ずるかもわかりません。
「お前さんはこれを幾何で離しなさるんだ」
この人形の為なら、一と身代投げ出してもと言った心持で長次は切り出しました。
美しい像を諸人の眼に
「親分、この人形は金ずくでは手離せません」
「と言うと――」
「お聴き下さいまし、これには深い仔細が御座います」
彫物師の松本鯛六、少しションボリとした肩を起こして、おどおどした風に長次の顔を見上げました。
その話というのは、少し混み入って居りますが、簡単に伝えると、――吉原三浦屋の華魁で小紫、これは一代の国色で、引手数多の全盛を極めましたが、昨年の春風邪の心地で床に就いたのが因で、暫らく今戸の寮に出養生までさせて貰って居るうち、それが癆核に変って、秋風の吹き初める頃には到頭果敢なくなってしまいました。