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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

05 代作恋文

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,830 字 · 24 页

青空文庫

悪魔はこういうのでした。――この娘を断じて人にやってはならぬ――病院から出たら最後、この娘はもうお前とは赤の他人ではないか――言い出すなら今だ――いや、永久にこの娘をお前の物にするなら今だ――と。

東野南次に、半沢伝次の兇暴さがあったら、幽里子を殺して自分も死んだかもしれないのです。東野南次自身の書いた恋文に対して、東野南次は今燃えつくような恐ろしい嫉妬を感じていたのです。

「東野さん、何を考えていらっしゃるの」

幽里子は声を掛けました。

「――――」

「お話して下さいませんの?」

このさわやかな子供らしい声も、誰やらを求めている清らかなひとみも、もはや東野南次のものではなかったのです。

――殺すなら今だ――

それは恐ろしい悪魔の囁きでした。東野南次の実行力の無さが、僅かにそれを食い止めましたが、唇がサラサラと貧血して、胸の鼓動が早鐘を打ちます。

「――――」

東野南次はフラフラと立ち上りました。

この上踏み止まっていたら、どうなったか解らず、暫らく幽里子の魅惑的な眼を逃れて、自分を取戻す必要があったのです。

「何うなさったの? 東野先生」

「――――」

東野南次はハッと立縮みました。