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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
なぜならオレはオレの魂に生きることのできる人間だから……寺田はこう考えていた。
オレの魂に生きることだ。まず実行だ、と寺田はここに決意した。
寺田は手さげカバン一ツぶらさげて上京した。転々と五泊して適当の場所を物色した。三日目に、さるマーケットで朝鮮人からピストルを買った。
四日目に泊った宿の近く、あまり人通りのない電車通りに三等郵便局があった。強そうな中年の男が一人、弱そうな青年と女だけだ。大将が強そうなのが気に入った。この先生をしめちまえば、他の者が手段を失うに至る公算が大であるから、これにきめた。
その晩は離れたところに宿をとり、翌朝早めに宿をでて上野駅で帰りの切符を買い、さて当日は土曜日だから、郵便局は正午までだ。
円タクを拾って予定の位置に待たせておき、ちょうど正午に郵便局の前へくると今しも入口をしめてカーテンをひいているところだ。すぐ裏へまわり裏口からズカズカはいると、家族の多くは茶の間に集っている。強そうな大将もそこにいるから、一同にピストルをつきつけ、何の凄味もきかさぬうちに物をも云わず大将に急所の一撃、足で蹴った。これについてはかねて修業をつんでいるから、狂いがない。