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じょよう
女妖
江戸川 乱歩
01 前篇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,691 字 · 20 页
婦人には連れはなかった。
「ねえ、何かあったんでしょう。あなたの目、孤独の目よ。生き甲斐がないって目よ。ねえ、どうかしたの? 失職したんじゃない?」
婦人が物を云ったり、身動きしたりするたびに、いい匂いが漂って来た。彼女のきれいな歯ぐきと、バラ色の唇から、その匂いが漏れて来るように感じられた。
「失職より、もっと悪いことです」
浩一は、この婦人には、何でも云えるような気がした。ショーウインドウのそとには、さっきのサンドイッチ・マンが、まだ立ち止まっていた。壁のような白粉の中から、毒々しい植え睫毛の目が、こちらをじっと見ていた。
「悪いことって?」
婦人は口で笑いながら、ちょっと眉をしかめて見せた。その顔が恐ろしく魅惑的であった。
「どろぼうです。盗んだんです」
「まあ……」
婦人は息を引いて見せたが、その実、大して驚いているようでもなかった。
「そして、その金を遣いはたしてしまったんです」
「じゃあ、せっぱつまってるのね。それで、そんな目をしているのね。あなた自殺しそうだわ。ね、ここじゃ駄目だから、あたしのうちへいらっしゃい。ゆっくり相談しましょう。いいでしょ。