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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

元来ポチを牝犬と承知で貰って来た時、細君は無論反対した。しかし犬も人間も同じに思っている千吉君はこの頃の文化婦人は然う子を生まないと主張した。押し問答の結果、若し生んだら自ら奔走して一匹残らず友人間へ片付けるという条件で細君を納得させた丈けに責任を感じている。

刺から犬になって話が少時途絶えた後、細君は、

「今日のお見送りは大勢でございましたの?」

と当然の質問に移った。千吉君は海外視察に出発する同僚を見送って帰って来たのである。

「皆来たよ。社長までやって来た。洋行は景気が好いね。羨ましくなった」

「小川さんも御一緒なのにお気の毒ですわね。些っとはおよろしいのでしょうか?」

「いゝや、好くないんだよ。盲腸炎と定って入院したそうだ。これから一寸見舞いに行かなければならない」

と千吉君は食事を終って、

「物置かい?」

「小川さんですか? ポチですか?」

「小川君も見舞うけれど、ポチも見て来る。ポチのことゝいうとお前は妙に煩さがるんだね?」

「然ういう次第でもありませんけれど、つい……」

「つい何うしたんだい?」

「それは叔父さんが御無理よ。小川さんのことゝポチのことを一緒に仰有るもんですから、私だって何方かしらと思いましたわ」